ジャズギターのアドリブに取り組むと、ほとんどの教則本やレッスンコンテンツでまず目にするのが「コードトーンを覚えましょう」という内容です。
それだけ基礎として重視されているテーマではありますが、実際に練習を始めてみるとなかなか習得に時間がかかるものです。
特に初心者の方にとっては、このコードトーンの段階でつまずいてしまうことも珍しくありません。
私自身の経験や生徒さんとのレッスンを通じても、そうした声をよく耳にします。
そこで本記事では、コードトーンの前にやっておくとスムーズに理解が進む練習方法を、具体的なフレーズ例とともに解説していきます。
この記事で紹介しているTAB譜の実演は↓の動画からご確認いただけます。
コードトーンの重要性
その前にまず、コードトーンとは何か、なぜそれがジャズアドリブにおいて重要なのかということについて、整理したいと思います。
たとえば↑のようなCMaj7（ドミソシ）コードを弾くとき、実際に押さえているのは4〜5音程度ですが、ギター指板上にはコードの構成音である「ドミソシ」が↓のようにたくさん点在しています。
これらの音を覚え、自由に指で拾えるようになることで
- コードにフィットした音が即座に弾ける
- ジャズらしいアルペジオフレーズが演奏できる
- クロマティックなフレーズの構築がしやすい
- コードトーンを組み合わせることで、色んなコードフォームを自在に構築できる
といった、大きなメリットを得られます。
コードトーン練習よりも大事なこと
ただし、コードトーン練習は初心者がつまずきやすいポイントでもあります。
まず、覚えなければならない形が多く、把握するのが難しいという問題があります。
さらに、せっかく覚えたとしても、それを実際の演奏でどう使えばよいのか分からず、練習が空回りしてしまいがちです。
こうしたつまずきを避けるために、まず身につけておきたいのが「コードトーンでアドリブする」という感覚です。
そのために今回ご紹介するのは、コードトーンの暗記ではなく、「コードフォーム」内の音を使ってフレーズを作る練習方法です。
コードフォームであれば日常的に押さえ慣れている形も多く、手に馴染んでいるはずです。
つまり、コードトーンという“見えない音”を探しにいく前に、すでに馴染みのあるコードフォーム内の“見えている音”を活用してフレーズを作るというアプローチです。
このアプローチを通して、コードの中で「どんな音が使えるのか」「どう使うと自然なのか」という感覚が磨かれていきます。
次にご紹介する具体的な練習フレーズを通じて、これらの音の使い方をぜひ実践的に学んでみてください。
そうすることで、「どんな音を知っているか」ではなく「その音をどう使うか」に意識が向き、自然とアドリブ力が育まれていきます。
【Ex-1】ネイバートーンとパッシングトーンの練習フレーズ
この練習では、「ネイバートーン（刺繍音）」と「パッシングトーン（経過音）」を使って、コードトーンをより自然につなげるフレーズを学びます。
↑のフレーズは、↓のコードフォームの音をネイバートーンやパッシングトーンを使って繋いだものです。
練習にあたっては、まずは元になるコードフォームやコード進行を覚える必要があります。
ポイント①
楽譜中の①は、ネイバートーン（刺繍音）と呼ばれる音です。
ネイバートーンとは、コードトーンの半音下の音に一時的に移動し、また戻る音のことです。
ポイント②
楽譜中の②は、パッシングトーン（経過音）と呼ばれる音です。
パッシングトーンとは、コードトーンとコードトーンの間を滑らかにつなぐ音です。
ポイント③
楽譜中の③は、音楽用語では倚音と呼ばれるものですが、個人的にはパッシングトーンとネイバートーンの合いの子のようなものだと捉えています。
コードトーン同士が半音で接しているため、パッシングトーンが使えないので仕方なく一旦外側にはみ出してから到達する、といったイメージです。
※リズムについて
リズムが分かりにくいとのご意見をいただいたため、リズムの読み方を黄色文字で書き加えました。
リズムをどのように捉えるかは人それぞれで、かつ感覚による部分が大きいので言語化するのも難しいですが、あくまで私自身の感覚を文字にするならこのようになる、といった感じで捉えてください。
「・」の文字は「何も発音しない」という意味です。
「タッ」のような小さい「ッ」がついている場合は、スタッカートのように短く発音します。
全体のリズムがスウィングしているので、「タタ」は実際には「タータ」という風になります。
しかし、テンポや曲の雰囲気によって「タタ」「タ-タ」「タータ」という風に伸び縮みしますので、実際どのようなハネ感で演奏するかは奏者のフィーリング任せの部分が大きいです。
※動画内の演奏例ではD7の箇所のリズムを間違えて弾いています。すみません。
【Ex-2】ターゲットを挟み込む形のフレーズ
続いては、コードトーン（ターゲットノート）を左右から挟み込むようなフレーズです。
この「挟み込み」の動きは、ジャズらしい表現に不可欠な要素であり、フレーズに緊張感や抑揚を生み出します。
ポイント①
２つ右側から挟み込むような動きになっています。
ポイント②
これは、前のコードのコードトーンから次のコードへ経過音で繋いでいるだけなのですが、この動き自体を「こういう動き」として覚えてしまってもいいと思います。
こういった音使いに慣れておくことで、クロマチックな音使いを自然に織り交ぜる感覚が育ちます。
パッシング・ネイバーに比べて少し複雑ですが、これは何音で…とかスケールの何度で…という風に考えるよりも、「いい感じ」の音使いを感覚的に選択していただくのがおすすめです。
「いい感じ」の音使いを瞬時に判断する能力もアドリブにおいてとても重要です。
【Ex-3】色々なコードフォームを使ったフレーズ
ここではより多彩なコードフォームを活用しながら、さまざまなポジションでのフレーズ作りを学びます。
このフレーズでは、以下のコードフォームを使用しています。
使用している音使いはEx-1、2でご説明したものと同じですので、単に使用するコードフォームが変わっただけです。
【Ex-4】高音弦のコードフォームを使ったフレーズ解説
最後に紹介するのは、高音弦のコードフォームを使ったフレーズです。
このフレーズでは、以下のコードフォームを使用しています。
おわりに
今回は、コードトーンを覚える前に覚えてほしい内容として、コードフォームの音を使ったフレーズ作りの方法を紹介しました。
今回の内容が完璧にできなければコードトーンを覚えても意味がないということではありません。
ただ、予備知識程度に頭に入れていただくと、コードトーンを学ぶ意義がより深まると思います。
記事内のTAB譜はこちらからPDFでダウンロードできます（※期間限定）
最後までお読みいただきありがとうございました。
↓ジャズギターのレッスン動画は以下の再生リストにまとめています。
