エフェクターを本体に内蔵したスマートギターDivitone MF StudioをHotone Japanさんから提供していただいたので、レビューします。
IR対応マルチエフェクター/充電式バッテリー/USBレコーディング/ピックアップ・シミュレーターと、宅録〜小規模な演奏現場まで1本で完結できる設計が特徴です。
※本記事は製品の提供を受けて作成していますが、記事内容は筆者が実際に使用した感想をもとに執筆しており、メーカーの意向に左右されない正直なレビューです。
付属品
付属ケースはかなりいい感じです。
リュックタイプなのが有難いポイント。
生地自体はややペラい印象はあるもののクッションも入っています。
大きくて収納力が高く見た目も良い、実用的なケースです。
その他、アーム、充電やPC/スマホ接続用のUSB-Cケーブル、シールド(フォーン)ケーブルが付属しています。
見た目と弾き心地
- 木材:ネック=メイプル、ボディ=オクメ(マホガニー系の木材らしいです)
- 仕上げ:フレットの端が丸くてスライド時の引っかかりが少なく快適です。一方でナットの仕上げは価格相応で、あと一歩といった感じです。
- ボディ形状:ひざ乗せ部が滑り落ちにくい形状で、座って弾くときに安定感が高いです。
エルボーコンターはもう少し深めの方が個人的には好み。 - 操作系:
- ピックアップセレクターは物理スイッチで素早く切替可。離れたパッチにも瞬時に切り替えられるので実用的。
- ボリュームつまみは、セレクターに干渉しそうな位置にあるのがちょっと不便
エフェクト部について
内蔵マルチエフェクターのクオリティーがこのギターの核だと思います。
この手のギターはサウンド面はあくまでオマケ程度のものといった印象がありますが、このギターのエフェクト部は単体で見てもかなり本格的な出来です。
- 構成:ノイズゲート/コンプ/ブースター/歪み(OD/DS)/アンプ各種/IR(キャビ)/EQ/モジュレーション/ディレイ/リバーブ、一通りのエフェクトが揃っています。
- ピックアップ・シミュレーター:ストラト/テレキャスター/レスポール/箱物/アコースティックシミュレーターなど、1本で色々なギターにキャラ替えが可能です。そこまで劇的な変化はありませんがそれっぽい雰囲気は感じられる出来です。ただ、若干音が奥に引っ込んだような感じになるので、ピックアップ本来のナチュラルな音を求める人はオフにしておいた方が良いと思います。
- IR対応:これは最近のマルチエフェクターでよくある機能で、さまざまなキャビネット(スピーカー)の音響特性をシミュレートしたIRデータを使えるという機能です。オリジナルのIRを5スロットまでインポート可能です。
- 音の印象:最近のマルチエフェクターらしい生々しくダイレクトな印象の音です。内蔵FXは即戦力レベルで、「エフェクト部だけ欲しい」と感じるぐらいの完成度でした。
- 運用について:エフェクトをオンにすると、ピックアップセレクターが音色切り替えのスイッチになります。
例えば
・フロント→ブルージーなクランチサウンド
・ハーフ→クリーンなカッティングサウンド
・リア→ディストーションをかけたリードサウンド
という風に、ピックアップごと全く異なった音色に切り替えられたりもできるので、通常のギターの場合の「ピックアップを切り替えながらエフェクターを踏む」といった手間が無く、操作がシンプルになって便利そうです。
電源・録音まわり
- USB-CでPC/スマホに直結して録音できます。
- 交換式リチウムイオンバッテリーで、もし劣化してしまったときに自分で交換できるのが嬉しい。
デジタルガジェットの弱点ともいえる寿命の不安が軽減されて、楽器として長く使えます。
おすすめのユーザー
中〜上級者の方
一番のおすすめは、機材慣れしている中〜上級者の方です。
ちょっとしたリハなどに行くのにギター1本だけで済みます。
普通のギターにヘッドホンアンプを挿せば同じことなのでは?と思うかもしれませんが、標準フォーン出力であるということと、5wayセレクターで音色切り替えが素早くできるので、現場的な観点ではMF Studioは有利だと思います。
初心者の方
このギターはエフェクトのパッチ切り替えとピックアップセレクターが合わさった独特の操作性なので、最初は戸惑うかもしれません。
しかし内蔵エフェクトが本格的でテンションあがる音を出してくれるため、初心者セットなどでは感じられない「ギターを弾く楽しさ」を味わえると思います。
エフェクターもきちんとした作りなので、音作りの基本が学べます。
ENYA Nova GO Sonicとの比較
別記事でレビューしたENYA Nova GO Sonicとの比較です。
1. 弾きやすさ
ENYA Nova GO Sonicはとにかく弾きやすいギターです。初心者でも違和感なくすぐに演奏に入れます。
一方、Divitone MF Studioはオール木材ボディで、GO Sonicに比べて「楽器を弾いている感」はありますが、質感は価格なりで、演奏性という点ではNova GOに軍配が上がります。
2. 音質・サウンドの本格度
音質ではDivitone MF Studioが圧倒的に優秀です。内蔵エフェクトの完成度が高く、ピックアップ・シミュレーターやIR対応によって、ストラトからレスポール、アコースティックサウンドまで幅広いサウンドメイクが可能です。
対してENYA Nova GO Sonicは内蔵スピーカーで手軽に音を出せる点は魅力ですが、音質はあくまで簡易的で、ややデジタル感が強め。さらに出音の遅延も若干感じられ、本格的な音作りを求める人には物足りないと思います。
3. 操作性
ENYA Nova GO Sonicは操作が非常にシンプルです。電源を入れてすぐに音が出せるので、初心者でも迷わず使えます。
一方、Divitone MF Studioはバンク・パッチ管理など、ある程度の機材知識が求められます。本格的な音を出したい、あるいは音作りを楽しみたい人には最適ですが、ギターを始めたばかりの人にはやや難しく感じるかもしれません。
しかし機材や音作りのノウハウは必ず必要になるものなので、このギターを通じてそれらのことを学べるという考え方もできます。
4. 演奏現場での使いやすさ
Nova GOはプリセットを順番に切り替える方式なので、目的の音色にたどり着くまで何度もボタンを押す必要があります。宅録や自宅練習では問題ありませんが、ライブなどで瞬時に切り替える操作は非現実的です。
対してDivitone MF Studioは物理セレクターで5種類の音を即切り替え可能なので本番やリハーサルでの使いやすさはMF Studioが上です。
Nova GOは内蔵スピーカー搭載なので、私がやっているような自宅でのレッスンなどの超小規模な環境においては大変便利です。
一方、Divitone MF Studioはリハ・小規模ライブ・宅録などのシーンで便利に使えそうです。またバッテリーが簡単に交換できるので、長期運用や突然の電池切れといったリスク管理でも有利なので、現場使用においてはMF Studioが有利だと思います。
5. 用途と立ち位置
- ENYA Nova GO Sonicは、「買ってすぐ弾ける」ことに特化したギターです。初心者の最初の一本や、上級者のサブとしても優秀。手軽さとシンプルさが魅力です。
- Divitone MF Studioは、「音作りを楽しみたい人」「機材に慣れている人」に向いています。内蔵FXの完成度が高く、リハや本番で使える柔軟さがあります。しかし完全なメインギターとして使うには物足りなさも感じます。家で弾く用途としてはGO Sonicの方が向いているので、MF Studioはメインギターをすでに持っている人のサブギター的なポジションで最も性能が発揮できそうです。
結論
- 最初の1本/ギターに挫折したくない初心者の人
→ ENYA Nova GO Sonic - 音作りにこだわりたい/現場使用に耐えるスマートギターが欲しい
→ Divitone MF Studio
おわりに
僕にとってこのギターが最初のスマートギターでした。
メーカーから依頼を受けた際に、最初は「内蔵エフェクターってどうなんだろう?」と思っていたのですが、実際に使ってみるとなるほどと思える拘りポイントが色々ありました。
「とにかく手軽に弾きたい」ならENYA Nova GO Sonicの方がハマるかもしれませんが、音色にも拘りたい、ライブや宅録で使えるクオリティーのギターが欲しい方にはDivitone MF Studioをおすすめします。


