ジャズのフレーズは、いかにもジャズっぽさを感じる独特の響きがあります。
それにはどんな秘密が隠されているでしょうか。
『ジャズっぽさ』にはリズム、ブルーノート、テンションノート…など様々な特徴があるのですが、その内の一つに、コードトーンをフレーズの骨組みとして利用するというのがあります。
これはジャズの中でも特にビバップと呼ばれるジャンルにおいて顕著です。
コードトーンとはコードの構成音のことです。
例えばCMaj7コードの構成音は『ドミソシ』ですが、ギターにおいてはコードを押さえるときの形だけではなく、実際に押さえていない場所の『ドミソシ』の場所を把握しておくことが、フレーズを弾く上で必要不可欠となります。
ですので実際多くのジャズギターの教本にはコードトーンの練習に多くのページが割かれています。
しかしそうやってコードトーンを覚えた後に生まれがちな疑問が、では具体的にどのようにコードトーンを利用すればよいのかということです。
そこで、この記事ではコードトーンの具体的な利用方法を示す10個のアイデアを、実例と共に紹介します。
コードトーンのみを使った基本フレーズ


ここからは、Dm7とG7のコードトーンを使ってフレーズ作りの実例を示していきます。
まずはこの2つのコードトーンの形を覚えてください。
この形を最後まで使用します。
赤丸の箇所が実際にコードフォームとして押さえる場所ですので、コードの形と関連づけて覚えるように意識してみてください。
コードトーンを基本にした10種類のフレーズ
Ex-1 パッシングノートを使ったフレーズ


パッシングノートとは、コードトーンとコードトーンを繋ぐ音を指します。
図の赤丸が次のコードのコードトーンで、それを目指してパッシングトーン(青丸)を使って音を繋いでいます。
日本語では『経過音』とも言います。
Ex-2 アプローチノートを使ったフレーズ①


コードトーンにまとわりつくような音をアプローチノートと言います。
赤丸のコードトーンから半音下がってもう一度赤丸に戻っています。
こういった音使いを、日本語では『刺繍音』といいます。
Ex-3 アプローチノートを使ったフレーズ①


このフレーズもコードトーンの半音下(青丸)からまとわりつくようなアプローチノートなのですが、Ex-2と異なるのはいきなりアプローチノートから始まっているところです。
このような動きを厳密には『倚音』と言い、Ex-2の『刺繍音』とは明確に区別するのですが、ジャズではその辺の厳格な定義はあまり無いようです。
ちなみにコードトーンの半音下の音はとても便利に使える音で、何も考えなくてもあらゆる場面で使用できます。
このようなフレーズはジャンゴラインハルトやジョーパスが得意としています。
Ex-4 アプローチノートとパッシングノートの組み合わせ


左右からまとわりつくアプローチノートにさらにパッシングノートが組み合わさって、最終的に赤丸のコードトーンに到達するというフレーズです。
Ex-5 ルート(1度)と3度を2度で繋いだフレーズ


1度や3度というのは『1番目の音』『3番目の音』という意味で、この場合は一つ目の赤丸が1度で、二つ目の赤丸が3度になります。
ちなみに1度は『ルート』という呼び方もします。
青丸は1度と3度を繋いでいるので2度の音ということになります。
Ex-6 G7の2度を ♭と#に分割したフレーズ


G7の2度を ♭と#に分割した例です。
Ex-5では一つだった青丸が2つに分かれ、一つはルートの方に移動して(♭2度)、もう一つは三度の方に移動(#2度)しています。
セブンスコード上ではこのような動きをすることがよくあります。
Ex-7 2つのアプローチノートを組み合わせたフレーズ


2つのアプローチノートを組み合わせて、Dm7は左右から挟み込まれるような動きに、G7は♭2と#2に追い立てられる(?)ような動きになっています。
Ex-8 七度と八度のパッシングノートを使ったフレーズ


7度とは4つある内の4つ目のコードトーンの音です。
赤丸がその次の八度となるのですが、八度はルート(一度)とオクターブ違いの同じ音です。
このフレーズでは、七度と八度をパッシングノートで繋いでいます。
これもとてもよく使われる動きです。
Ex-9 九度を使ったフレーズ


八度のさらに次の九度の音を使います。
九度は捉え方によってはアプローチノートの一種とも捉えられますが、『ナインスコード』のようにほとんどコードトーンのような扱いをすることも多いです。
このような、コードトーンなのかそうでないのか扱いが微妙な音を『テンション(ノート)』と言います。
『準』コードトーンといったイメージで捉えてください。
Ex-10 九度、パッシング、アプローチノートを使ったフレーズ


最後は九度のテンションにパッシングノートやアプローチノートを混ぜ込んだフレーズです。
最後に
ご紹介した様々な要素は、ジャジーなフレーズ作りをする上でとても大切な知識です。
しかし知識があるだけではフレーズを作ることはできません。
音楽は演奏してこそ価値があるものですから、むしろ仕組みが分からなくても『実際に使えているか』どうかの方が重要です。
ですので、細かい理屈は後回しにして、ここで紹介したものに限らずまずは色々なフレーズを沢山弾いて覚えていくことをおすすめします。
実際、筆者自身もこれらの要素は経験的に学んできたものです。
ただ自分が感覚的にやっていることを改めて書き出してみると、自分自身の偏ったクセや、あまり使えていない音使いなど、色々と良くない部分が見えてきます。
なので、既に色々なジャズフレーズが弾けるという方も、この記事で紹介した分類を元に改めてフレーズを見直すのも有意義なのではないかと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
↓ジャズギターのレッスン動画は以下の再生リストにまとめています。

